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 クナッパーツブッシュのこと、四度び  
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続続クナッパーツブッシュのこと掲載以降に、クナ関連で起きたことを記します。
1. クナの伝記「クナッパーツブッシュ 音楽と政治」発行
当HPにも寄稿してくださったK.Oさんによるクナッパーツブッシュの伝記が発売されました。

「クナッパーツブッシュ 音楽と政治」 奥波一秀著、みすず書房、ISBN: 4-622-04265-7
です。

続クナッパーツブッシュのページにも紹介しました53年バイロイト・キャンセルの真相の他にも、戦前戦中時代のナチとの確執、身の置き方の問題、さらに遡って学生時代から婚約、解消、最初の結婚、離婚、再婚・・・等の私生活の描写、バイエルン国立歌劇場監督へと至るキャリア、バイエルン州追放、ウィーンでの活躍、戦後・・・と、今まで断片的また誇張して伝えられたこの巨人の生涯を、精細な文献調査を通じて、客観的に記したものです。さらにクナッパーツブッシュ自身が記した文章にも触れることができます。そこで知ることが出来たこの指揮者のワーグナー観は、もう、ごりごりの伝統墨守主義者のそれでした。クナにとってのワーグナーは、もう解釈とか批評以前のモンダイで、ただただ、ひたすら守られ、高められるべき聖典であったのだと思いました。
たいへんな労作であり、著者の奥波さんには大きな感謝を捧げると共に、この類い希なワグネリアン指揮者に感心を持つ方には、是非ともご一読をお勧めしたいと思います。
2. 58年の『ニーベルングの指環』全曲がGOLDENMELODRAMより発売

GOLDENMELODRAMより、1958年のバイロイト音楽祭での『指環』全曲が発売されました。従来のHUNT/ARKADIAのCDが酷い音で、MELODRAMのLPが素晴らしい音質だったので期待されていたものですが、期待に違わぬ、素晴らしい音質で発売されました。
これでGOLDENMELODRAMからは56、57、58の戦後バイロイトの指環が全て発売されたことになります。これらの聴き比べはクナ・ファンにとっては何より楽しみなことでしょう。音質のみについて言えば、やはり新しいものほど微妙な差ながら良くなっています。一方、参加した歌手の出来栄えは個々に良い人とそうでない人と様々ですし、同じ歌手でも、たまたま録音された日の出来栄えでこっちよりあっちの方が良いという評価が様々にありそうです。前者の例ではジークムントとジークリンデの兄妹のペアが、56年から順にヴィントガッセン&ブロウェンスティーン、ヴィナイ&ニルソン、ヴィッカース&リザネックとそれぞれ聴き応えがあります。後者の例は、不動の二枚看板(?)ヴォータンのホッターとブリュンヒルデのヴァルナイです。58年のチクルスにナイドリンガーが参加しなかったのは本当に残念です。クナの指揮は、58年盤の重厚な演奏と、間に57年を挟んで、56年盤の活気と、どちらにより大きな魅力を感じられるか、これも聴き手によって評価の分かれるところでしょうが、幸いなことに、全て聴くことが出来る!
この上に望むことが出来るなら、ミュンヘンでのチクルスと、クナ最後のチクルス上演となった59年ベルリン国立歌劇場での録音が遺っていないだろうかと夢に描いております。

3. バイロイトのパルジファルが続々とGOLDENMELODRAMより発売
GOLDENMELODRAMより、クナがバイロイトで指揮したパルジファルの各年の録音が続々と登場しています。1952、54、56、58、61、63、64年がGOLDENMELODRAMで、51年DECCA、60年GLOSSA、62年PHILIPSで、残すところは55、57、59の三年のみとなりました。また51年と62年は各々レコード会社による録音ですので、他にバイエルン放送の収録した音源が遺っているのかも知れませんが。
残念ながら、恥ずかしながら、これらの録音の全てを聴きとおすほど根気の無い怠け者ですので、申し上げることも無いのですが、やはりPHILIPS盤のステレオ録音の素晴らしさは、何ものにも代え難いものがあると思いました。DECCA盤のモノーラルなりに素晴らしい録音も同様ですが、54年盤のハンス・ホッターのアンフォルタスは素晴らしいもので、ぜひお聴きになってみていただきたいと思います。